スミスウィック社のこだわり
ルアーの話を始めると、楽しくて時間が過ぎていくのを忘れてしまいます。ルアーは意思のない道具です。だから、道具を使うアングラーの考え方や能力によって結果が大きく変わってしまうからこそ、使いこなしてみたいという願望が出てくるのだと僕は思います。
スミスウィック社にデビルズホースという有名なスイッシャーがあります。1950年初頭に作り出されたルアーで、現在になってもAF100とAF200という2つのモデルが多くのアングラー達によって使われています。一般的に言うと、モデルナンバーが大きい方がルアーのサイズも大きいと考えやすいのですが、実はこの2つのルアーは長さ的にはどちらも4.5インチです。AF200の方がボディーが少し太く、特に頭部に浮力を持たせる形状になっています。どちらも水平浮きをするダブル・スイッシャーなのですが、よく見るとプロペラの形と大きさが少し違います。見たことがある人は知っていますが、多くのアングラー達はモデルナンバーの大きいAF200の方が大きいプロペラを使っていると思いがちです。
実際には表面積の大きなプロペラはAF100の細いボディーの方に取り付けられています。その理由は、水に接するプロペラの表面積が大きい方が大きな抵抗が生まれ、それがルアーの移動距離を止める働きがあるからです。また、浮力が少ない、細身のボディーは前のプロペラに生まれる抵抗で頭を下げます。それもルアーの動きを止める力になるのです。結果として、このルアーは、ルアーの動きを小さくすることがやりやすいのです。つまり、活性が低かったり、プレッシャーの高いエリアでのカバー狙いに非常に使いやすいのです。
浮力の大きい、AF200に小さいプロペラを付けているのは、ロッド・ワークによるリトリーブ中に、あまり大きな抵抗を作り出さないことによって、スピーディーに効率よく広いエリアからバスを探し出すことがやりやすいからです。このことは、ルアー頭部により大きな浮力を持たせていることからも理解できます。AF200は自然湖などで見かける、広いウィード・エリアでバスを探し出す時などには非常に効率的です。
もちろん、そのルアーの特性を知っていれば、その状況に合わせて上手に使い切っていくこともできます。例えば、AF200でカバー周りを攻めるのであれば、ロッドを柔らかめ設定にしてしまい、ストロークの距離を小さめに意識します。半面、AF100で広いエリアを探るのであれば、ロッドを少し硬めにして、ストロークの幅も気持ち長めにしてしまいます。まずは使い分けができるように心がけることが上達への道だと僕は思います。
12月14日に釣りに出た時の話です。12月に入ってくると寒冷前線の通過などで、表水温も下がり、多くのアングラー達はワームやジグでポイントを攻めているようでした。僕は、水温が少しは上がる午後からボートを出して、多くのアングラーがすでに何回も攻めた後のカバーをAF100で丹念に狙っていきました。そんなに数が出たわけではありませんが、3時間くらいの釣りで4尾のバスを釣り上げました。その時の一番良かったバスが、今回の写真の物です。楽しい思い出を作ってくれました。スミスウィック社がAF100とAF200に組み込んだこだわりを知っておくと便利なことも多いと思います。
ヒロ 内藤